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文章読本さん江 ISBN:448081437X 斎藤 美奈子 筑摩書房 2002/02 ¥1,785

これまで出版された文章の手引き書をいろいろな側面から批判的に分析している本である。

著者がいうには、谷崎潤一郎(文章読本)、三島由紀夫(文章読本)、清水幾太郎(論文の書き方)が「文章読本界の御三家」、本多勝一(日本語の作文技術)、丸谷才一(文章読本)、井上ひさし(自家製文章読本)が「文章読本界の新御三家」だそうだ。

しかし、これらの新旧の御三家以外に、おぼえていられないほどたくさんの文章読本が俎上に上げられている。文章読本という種類の本がこれほどたくさんあるとは思わなかった。それぞれの本の特徴が明快に説明されているので、読んでいなくても読んだような気分になる。

前半で、男たちはなぜ「文章読本」を書きたがるのかを皮肉たっぷりに分析し、それぞれの本の矛盾点や問題点などを指摘している。するどいし、著者のユーモアのある文章がとても楽しい。

後半では、明治時代の文章典範から始まって、作文作法書の歴史をわかりやすく紹介している。

明治時代の小学生にとって、作文とは「観梅の記」とか「潮干狩りの記」などの記事文を漢文調の決まり文句で書くことだったという。「一瓢を携へて山に登れば」「忽ち酒を酌み白を挙げ」「盛に盃を飛ばし、或は吟じ或は歌ひ」「是に於て一小亭に息ひ、酒を命じ肴を呼び」といった文を(小学生が)本気で書いていたらしい。おもしろい。

たんご屋は翻訳とはいえ文章を書くのが仕事であることにはちがいないので、この本で著者が揶揄まじりに造語した「文章プロレタリアート」(編集者、ライターなど、名前の出ることのない文筆業者)という職業人になるのだろう。実際、わたしも、どのように文章を書くのがわかりやすくて誤解されにくいのかということに興味を持ってきたし、なんとかそういう明快な文章を書けるようになりたいものだと思ってきた。

しかし、この本の基底にある考えは(著者は明確には書いていないが)、文章はどう書いてもよいのだ、ということである。たしかにそのとおりだなあと思って反省した。勉強になる本だった。

(以前別のブログに書いた記事を改変して再掲しました)
コメント
この記事へのコメント
斉藤美奈子さんって、見た目からの判断であまり好きではなかったのですが、文章読本を書きたがる男性に対しての皮肉はおもしろかったですね。よく読むとほんとに矛盾点がたくさんあるものだと気づかされました。自分の書く文章が一番良い書き方だよと、ある人は自信たっぷりに、ある人は控えめに自信たっぷりにわざわざ文章にしているのですね。いちいち本気にしてたら、振り回されて文章なんて書けないですね。
2007/06/13(水) 09:48 | URL | ももひん #-[ 編集]
コメントありがとうございます。
世の文章読本は自分の書いた文章を例にしていることがほとんどなくて、たいていは新聞やら有名作家の文章を取り上げていると思います。それもまあ卑怯なところですね。
文芸系の文章読本は「おもしろい読みもの」だろうとわたしは思います。そういう文芸の 1 形式でしょう。
文芸ではなくて単純に「わかりやすい文章の書きかた」ということであれば、そのための技術は存在すると思います。テクニカルライティングのセオリーなどはその典型ですね。
しかし、それを金科玉条にすると、その感覚が固定して世の中の文章やことばの流行や変化についていけなくなる、つまり守旧的感覚の人間になってしまいそうで、それもいやだなあと思っています。
2007/06/13(水) 10:52 | URL | たんご屋 #Qhkulfr2[ 編集]
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