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40 年くらい前のベストセラー「英語に強くなる本」に「線香読み」という英語の読みかたの手法が書いてある。

暗やみで線香を使って少しずつ英字新聞を読むとする。読んだ部分は線香で焼けてしまうので戻って確認することができない。そのように、決して前に戻らずに先へ先へと読みすすめていく読みかたが線香読みだ。

つまり、

She went to the park (彼女が公園に行ったのね) with her family (ほほう、家族とごいっしょですか) to celebrate her nephew's birthday.(なるほど、甥御さんが誕生日だったわけね

といったぐあいに読むというわけだ。

意味を順に理解していくようすを便宜上日本語で書いたが、もちろん、実際には英語のまま理解すればよく、いちいち頭の中で日本語に訳す必要はない。

文を頭から順に読むというのは、日本語でも英語でもネイティブにとって当たり前のことだ。だいいち、話し言葉ならどんどん先に流れて行っちゃうから、後から出てきたことを前に戻して理解するというわけにはいかない。

しかし、日本では漢文に返り点を付けて読んでいた歴史があり、英文でも「するところの」のように関係詞のところで前に戻って読むことが多いということだろう。実際、幕末のころの日本人英語学習者は英文に返り点をつけて読んでいた。

これはつまり翻訳しながら読んでいるということだ。漢文を考えれば、あれはまさに読むことと翻訳することが同じである。読むついでに翻訳もしてしまうのだから、ある意味、とても効率がよいともいえる。しかしこの方法では速く読むことができない。ただ読むだけなら翻訳しないで読んだほうがよいにきまっている。

日本語と英語では語順が違うので、翻訳では後ろのほうで出てきた節や句を前に戻して日本語にせざるをえないことが多い。それでも、翻訳技法としては、一般に、頭から訳し下すのがよいとされている。線香読みに倣えば、これは「線香訳」とでもいうことができるだろうか。

Please read this manual carefully before using the product.

もしこれが学校の英文和訳の問題であれば、次のように訳さなければならない。

製品を使用する前に、このマニュアルをよく読んでください。

なぜなら、学校の英文和訳というのは、たとえば before の意味を理解していることを先生に示すためにあるものだからだ。

しかし、実務翻訳なら(少なくともわたしは)次のように訳すだろう。

このマニュアルをよく読んでから、製品をご使用ください。

これなら、英文と同じ順で時系列に沿って訳していることになる。

(以前別のブログに書いた記事を改変して再掲しました)
コメント
この記事へのコメント
こんにちは。私自身、英語を語順通りに素早く処理する能力が乏しいということにやっと気づき、練習を始めなければ、と思っていたところでした。日本人が英語を学ぶ上で大切なポイントですよね。
2007/06/11(月) 21:32 | URL | mamarimama #-[ 編集]
mamarimama さんはいつも謙虚でいらっしゃいますね。
この記事では、たいして英語ができるわけではないのに偉そうなことを書いてしまったかな、とちょっと反省しています。
この本を読んだのは子どものときで、トイレの個室に入っているときにノックされたら someone in と答える、とかちょっと変わったことも書いてありました。でも、「線香読み」という考えかたを早いうちに知ったのは、あとで少しは影響されたところがあったかもしれません。
2007/06/11(月) 23:08 | URL | たんご屋 #Qhkulfr2[ 編集]
「英語に強くなる本」は、なつかしいですね。「線香を使ったら、焼けて裏のページが読めなくなるんじゃないか?」と著者の主張の本質とは関係ないところが気になったので、私は当時からひねくれていたようです。

頭から意味を取っていくのは英語理解の上で大変重要だと思いますが、翻訳についても「頭から訳せ」という技法・指導が一般的らしいのが、実はちょっと合点がいかない点です。

「~するところの」式の訳でいい、というわけではありませんが、翻訳(特に文芸もの)はあくまで日本語の表現を味わうものなので、無理に頭から訳すことにこだわる必要もないように思うのですが。もちろん、筆者の思考の流れに沿うことが非常に重要、あるいは効果をあげている場合ならば、極力それに従ったほうがいいのでしょうけど。
2007/06/11(月) 23:11 | URL | 子守男 #SHLDkvn6[ 編集]
なるほど、頭から訳すほうがよい場合が多いというのは、まあそりゃあそうだろうなあ、とわたしはあまり疑問を持ったことがありませんでしたが、本当にそうなのかどうかを少しは疑ってみたほうがよいのかもしれません。
たしかに、個別具体的にいえばどうしても頭から訳せないこともありますし前に戻るように訳すほうがかえってよいと思うこともありますね。そのあたりは柔軟に対応しているつもりではいたのですが、うーん。
2007/06/11(月) 23:41 | URL | たんご屋 #Qhkulfr2[ 編集]
あ、もちろん「頭からの訳はダメ」というつもりはありませんし、現実には翻訳者の皆さんは柔軟に対応されていると思っていますので、私の書き方がまずかったかもしれません。
ただ、たまに翻訳についての本を読むと、「頭からの訳」がやや強調されすぎているような印象が個人的にはあるので、ちょっと書いてみました。そうした訳に無理にしようとして、不自然な日本語になったら意味がないと思いますし。
2007/06/12(火) 00:12 | URL | 子守男 #SHLDkvn6[ 編集]
学校の英語の授業では関係詞の限定用法などは「後ろから戻る方法で理解する」ことしか教えませんから、「頭から訳す」というのは翻訳独特の技法といえると思います。だから翻訳技法の本ではそれをつい強調してしまうところがあるのかもしれません(笑)。
それと、これは通訳でも同じだと思いますが、前から訳したほうが現実に楽ですからね。英文と同じ流れで作業を進めていくことができますから。とくに IT 翻訳のように翻訳支援ツールを使って大量の英文を訳すような場合は「頭から訳す」と作業が楽になります。
実務翻訳では原文に書かれていないことを補ったり原文に書かれていることを省略したりするということは基本的にできませんから原文の構造との対応にこだわらざるを得ませんが、文芸翻訳ではそのあたりの自由度が高いでしょうから原文の構造にあまりこだわっていないのではないかという気がします。原著者のいいたいことを訳者が咀嚼してもっとも自然と考える日本語表現に変換するのでしょう。その結果としてたまたま「後ろから戻る」ことになったり「頭から訳す」ことになったりしているわけでしょうから、原文との対応にこだわる考えかた自体に意味がありません。
この話はおもしろいので、適当な実例が出てきたら具体的に取り上げて考えてみたいと思います。
2007/06/12(火) 07:33 | URL | たんご屋 #Qhkulfr2[ 編集]
コンニチハ。
「線香読み」って面白いですね。いい言い方を伺いました!
字幕の場合も、特に原音に固有名詞が出てきた場合などは
原音順に訳してあげないと座りが悪くなったりします。
(耳にひきずられる部分があるので)。
でも一方で、訳し上げしないと日本語として不自然、
という場合もあり… そこが翻訳の面白いところでもあると
思うんですが、難しいですよね。すごく。
2007/06/12(火) 08:44 | URL | すー #-[ 編集]
なるほど、原音の発声と近いところで字幕が表示されないと妙な感じになるということですか。
本当にむずかしいですが、こういうところを自分なりにくふうできるのが翻訳のおもしろさですね。
2007/06/12(火) 09:52 | URL | たんご屋 #Qhkulfr2[ 編集]
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