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むかしコンピュータ技術者をやっていたので、大型/中型コンピュータを「立ち上げる(起動する)」という言いかたはよく聞いていたし自分でも使っていた。まったく違和感はない。英語では start (up) とか boot (up) などという。

しかし、この言いかたに違和感を覚えるというひとは多い。「立つ」は自動詞で「上げる」は他動詞だから複合語にするのはおかしいという。文法的に正しくするなら「立て上げる」「立たせ上げる」「立ち上がらせる」になるそうだ。

ふーん、そういうものなのかと思う反面、「立ち上げる」なんていうのはもともとコンピュータ技術者が現場で使っていた隠語なのだから文法的な正しさを求められても困るなあとも思う。

「日本語の乱れ」を嘆き、文法的な正しさや語源的な正しさを振りかざす権威主義的なひとは苦手である。権威主義的なひとというのは何も他人の誤用を指摘する側だけにいるのではない。誤用を指摘されたことで卑屈になって異常に恥ずかしがるのも同様に権威主義に毒されている。

わたしたちは学者の考えた文法に基づいて日本語をしゃべったり書いたりしているわけではない。日本語の根底にきっちりした正しい文法構造があるはずだと考えるのは話が逆になっていると思う。学問的にはどう考えられているのか知らないが、母語というのはだれもが自然に身につけて自然に使っているものであって、そのようにすでに世の中で自然に使われている言語の世界を学者が観察してなんとか見つけた規則らしきものが文法だとわたしは思っている。だから、決定的な文法なんていうものはなく、学者の数だけ文法が存在する。

現実に通用していることばと文法のどちらが本質かといえば現実に通用していることばにきまっている。規則なんて本当はないのかもしれないのだ。

だいたい、現代仮名遣いと常用漢字を使って文を書いている現代人が「本来の正しい日本語」ばかりを求めても詮なかろう。


日本語/文法についてのその他の主な記事:
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コメント
この記事へのコメント
文系卒の私がプログラマの新人研修を受けた当時は今ほどコンピュータが一般に浸透していませんでしたから、私も「立ち上げるって何??」でした。
もちろん自動詞+他動詞にも驚きましたが、文法的な違和感だけでなく、他の用語「落とす」「落ちる」「暴走する」「死ぬ」「殺す」も含めて暴力的で無神経な言葉が多いような印象を受け、心がすさみそうでした。(擬人化が面白いな、と感じる面もありましたが。)

すぐに慣れて平気で使えるようになりましたけど、私は当時感じた違和感もずっと忘れないようにしたいと思います。
2007/07/17(火) 20:33 | URL | ぐうたらぅ #h2gwSyWs[ 編集]
ぐうたらぅさん、コメントどうもありがとうございます。
書いていただいたようなことばはわたしも使っていました。ぐうたらぅさんのおっしゃるようなことはこれまで考えたことがありませんでした。そういう感じかたもあるのだということを知ってとても新鮮に思います。
そういったたぐいのことばは楽器を作る仕事とか家具を作る仕事など職人系の仕事でよく使われていそうですね。書籍や雑誌の編集者なんかも使うかな。職人系の仕事に限ってそういう語彙が使われるのだとしたら、とても興味深い現象だと思います。言語学の研究者が研究テーマにしてくれませんかね。
2007/07/17(火) 21:15 | URL | たんご屋 #Qhkulfr2[ 編集]
こんにちは。ブログに来ていただいてありがとうございます。

日本語は難しいですね。私はコンピュータ暦が長いからか、何の違和感もなく「立ち上げる」って使っています。自動詞、他動詞の区別があったなんて面白いですね。

言葉はすごい勢いで変化しています。私のブログでもカタカナのことを書きましたが、これもいずれ日本語になっていってしまうんだと思います。

一昔前は英語の表現を直訳したような言葉が多かったような気がしますが、最近はカタカナをそのまま動詞や形容詞として使うパターンが増えているような気がします。

言葉って難しいですね。
2007/07/20(金) 00:48 | URL | だ~@バイリンガル子育て中 #HplzzCEs[ 編集]
「立ち上げる」は、そうですねえ、わたしも違和感がありません。自動詞、他動詞というのはふだんはあまり意識していませんけれどね。不勉強ゆえ知りませんが、自動詞、他動詞というのはもともとは外国語の文法で使うことばなのでしょうか。それとも日本語文法でもむかしから使っているのかな。ご存じのかたがいらしたら教えてください。
2007/07/20(金) 09:26 | URL | たんご屋 #Qhkulfr2[ 編集]
私は文系ですが、「コンピューターはそういう言い方をするのか」くらいに思って、違和感は抱きませんでしたし、自分でもすぐに使うようになりました(「コンピューター」という表記の方が落ち着くのは文系の証ですね)。自動詞+他動詞の複合語だということにも気づきませんでした。

しかしその後、「作業部会を立ち上げる」「事業を立ち上げる」など、コンピューター以外についても使われているのを聞いた時は、何だかヘンだなと思いました。文法的にどうこうというのではなく、単純に聞き慣れないコロケーションだったのが理由でしょう。私自身は今もこうした使い方はしませんが、もう定着したといっていいでしょうね。持っている電子辞書にも載っていました。
2007/07/21(土) 09:29 | URL | 子守男 #SHLDkvn6[ 編集]
「作業部会を立ち上げる」というような言いかたはコンピュータ用語とは別にできたのではないかという気がしています。どういう語源でそういういいかたができたのかはわかりませんが、糸井重里さんのいう「おとな語」ではないでしょうかね。
コンピュータを「立ち上げる」「落とす」というのはおおげさなようですが、むかしの汎用大型コンピュータでコンピュータを起動することや停止することは簡単なことではなくオペレータの重要な仕事でしたので、「立ち上げる」とか「落とす」とかいう大仰さがまさにぴったりだったと思います。いまのパソコンでは電源ボタンを押すだけで起動しちゃいますので、そういう意味での違和感があるひともいるのかもしれませんね。
2007/07/21(土) 10:10 | URL | たんご屋 #Qhkulfr2[ 編集]
はじめまして。
校正や執筆中に、「これは誤用か?」と気になって検索した際、
何度かこちらにお邪魔しておりました。

20年ほど前、パソコン雑誌の編集を少しだけ手伝っていたことがあり、
理系の人々が話す不可解なコトバを、おもしろく聞いていました。

コンピュータを立ち上げる。
なるほど、自動詞+他動詞が問題とは・・・。
そこまできちんと考えたことはありませんでしたが、
やたらと擬人化するのは、
実は人間味を求めているのかな、などと思ったり。

ちなみに、「コンピュータをタチアゲル」と言う時、
「起ち上げる」の字面が浮かんでいます。
2008/02/17(日) 17:38 | URL | sanmonbunshi #-[ 編集]
なるほど、「起ち上げる」ですか。さすが文士さん、格調が高いです。「起つ」は常用漢字外の読みかたなので、実務翻訳の仕事では残念ながら使えないことが多いでしょうね。
コンピュータ技術者が擬人的な表現をよく使うのは、感情として人間味を求めるというより、人間には人間を対象とした行動様式や思考様式をたくさん脳や DNA に備えているので、対象に人間を自然に感じてしまうのだろうと思います。ペットもそうだし、愛車なんかもそうですね。
2008/02/17(日) 18:32 | URL | たんご屋 #Qhkulfr2[ 編集]
「立ち上げる」は「立つ+上げる」ではないよ

「立ち上げ」で一つの慣用的な品詞ですから

「立ち上げ+る」で正しい用法です
2009/10/22(木) 02:09 | URL | ジャック #-[ 編集]
すでにできあがった動詞として品詞分解すればそのとおりですが、その前の複合語として捉えたときに違和感のあるひとがいるということでしょう。単純にいえば、「起き上がる」はふつうの複合語だけれども、「起き上げる」というのは変じゃないの?ということです。
この語はまだ新しいので「受け賜る」→「承る」のような、分解しにくい一語にはなっていないと思います。
新語に理解のあった故金田一春彦さんも、この語については苦言を呈されていたようですね。
2009/10/22(木) 15:25 | URL | たんご屋 #Qhkulfr2[ 編集]
ちょっと変な言葉ですよね…
「流行る」とか「事故る」とか「ROMる」とかと同じ分類でしょ

「立ち上げ」って技術用語自体が英単語をブツ切りにしてくっ付けた単語なんじゃないかな?


また全然別の観点から考えてみたたんですが…
変な例ですけど

巨大ロボットの操縦をしてたとして
寝た姿勢のロボットを起こす時に操縦者は何て言いますかね?

「立ち上がらせる」か
「立ち上げる」か

私はこの言葉ってある意味、主体が二つ存在する言葉なんじゃないかと思ってるんですよね。
2009/10/23(金) 00:49 | URL | ジャック #-[ 編集]
擬人化という考えもありますが

馬に乗ってたとして
座ってる馬を
「立ち上げる」とは言わないでしょう?
「立ち上がらせる」でしょう

騎馬戦をしてたとしても
指揮者が馬になっている人間に命令をするときは
「立ち上げる」
ではなくやはり
「立ち上がらせる」
でしょう?

「擬人化」というよりは「同一化」に近いような…

2009/10/23(金) 00:58 | URL | ジャック #-[ 編集]
なるほど、「立ち上げ」という名詞に「る」をつけて無理やり動詞にした、という意味ですね(「流行る」は「はやる」という和語の宛て字ですから少し違います)。
わたしも「立ち上げる」という語と「立ち上がる」という語には結果として似たかたちになっただけで直接の関係はないと思っています。
それと、自動詞、他動詞という西洋語の概念で日本語の正誤を考えてもよいのかしらとも思います。もともと日本語母語話者は主体が客体をどうこうするとかいうようなことをあまり意識していないのではないでしょうか。最近は英語教育の影響で少し変わってきているかもしれませんが。
小理屈で難癖をつけることはできますが、「立ち上げる」という表現がこれほど広く受け入れられているということは日本語本来の論理にそれほど反していなかったのだろうと思います。
いま思いついたのですが「棲み分ける」というのもありますね。これは今西錦司さんが作ったのかしら。
2009/10/23(金) 06:00 | URL | たんご屋 #Qhkulfr2[ 編集]
>>「立ち上げる」という表現がこれほど広く受け入れられているということは日本語本来の論理にそれほど反していなかったのだろうと

おっしゃる通りだと思います。
その辺りが日本語の深淵なんでしょうね…

ご返事ありがとうございました。
2009/10/24(土) 03:01 | URL | ジャック #-[ 編集]
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