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「バカの壁」の養老孟司さんが英文校正エナゴのインタビューで、英語の論文を書いた経験を次のように語っている。

昔はインターネットもありませんから、英文を書くには、ほかの文献を読むしかない。自分の言いたいことに近いことを言っている箇所にぶつかるまで探して、そこから表現を拾ってくるんです。「これを言うのに英語ではこういう表現をするのか」と、英語の書物を読んでいてハッとすることがあるでしょ。それにぶつかるまで探す。

そのようにして、いったん作り上げた論文でも後でよい表現が見つかるとタイプライタで打ち直すということを繰り返したという。気の遠くなるような作業である。まあ学者は論文を書くのが仕事だし、そのためにはいくら時間をかけてもよいのだろうからそういうことができたのだろう。

養老先生とはまったくレベルが違うが、不肖わたしも英文を書くときあるいは日英翻訳のときに同じようなことをする。関連文献を読みまくるほどのひまはないから Google のフレーズ検索を使う。

たとえば、むかしやった日英翻訳の中に、豪州でのクリスマスの朝のようすを描写した次のような文があった。

若い家族の住む住宅地では、朝早くから子供達がプレゼントにもらった新しいオモチャで遊ぶ姿が見られます。

この「住宅地」を単純に辞書で引いても residential districtresidential arearesidential quarter などさまざまな表現がある。英語ノンネイティブのわたしに、それらの細かい含意の違いがわかるわけがない。また、豪州は英米と慣用が違う可能性もある。そこで、次のように Google で検索して件数を比較してみる。

"residential district | districts" site:au (約 937 件)
"residential area | areas" site:au (約 611,000 件)
"residential quarter | quarters" site:au (約 732 件)

これによって、少なくとも豪州では residential area、residential areas という言いかたがよく使われているようだなと見当をつけられるというわけだ。この結論は間違っているかもしれないが、納期のある仕事で調査にそれ以上時間をかけるのはむずかしい。けっきょくわたしは次のように訳した。

In the residential areas where young families live, you will see children playing from early morning with brand-new toys given to them as Christmas presents.

see children playing よりも see children play のほうがよかったのかなとか、いまだによくわからず不安なところがたくさんある。こういうことをずっとやっているのだから、こんな簡単な文を作るだけでもどれだけの時間がかかっていることか。

日英翻訳は英日翻訳のおよそ 2、3 倍の報酬を得ることができる。しかし、英語ネイティブならともかく、わたしのような英語ノンネイティブの人間には手間がかかりすぎて割に合わない。

それでも今は無数の英文例が Web 空間にあり、しかもそれをさまざまな条件を指定して検索することができる。養老先生が論文を書かれたころよりは調査作業が格段に楽になっていることはたしかだろう。
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