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偏見の構造―日本人の人種観
ISBN:414001055X 我妻 洋 米山 俊直 日本放送出版協会 1967/01 ¥788

この本の奥付けに「昭和 42 年第一刷発行」とある。西暦でいうと 1967 年で、キング牧師が暗殺された年の前年にあたる。

日本人の伝統的な美貌観と江戸時代や明治時代から現代にいたるまでの異人観の歴史、日本在住や海外在住のさまざまな日本人に対する聞き取り調査に基づく日本人の白人観や黒人観、さらに、人種とは何か、人種的偏見の心理、偏見の構造といったことが詳細に論じられている。

著者の我妻洋さんの略歴を見ると心理学の先生だそうで、そのせいか、偏見をもつ心理についての考察は精神分析的な理論に基づいているようだ。

我妻さんによれば、

偏見という心理は、敵意や怒りの抑圧 → 転位 → 投射 → 合理化という過程を経て形成される。
偏見の強い人は、親とか、政治的指導者とか、宗教的指導者とか、何らかの権威的存在を崇拝し、精神的に依存する傾向が強く、自分の周囲や世界には、正体のしれぬ、悪意に満ちた危険なことだという不安を持っている。

のだそうだ。

さらに、我妻さんは、こういう偏見を避けるためには

自分の中に攻撃衝動を認めることを恐れず、その緊張に堪え、昇華しうるだけの健全で強靱な自我をもたなければならない

という。

学問的にはそういうことなのかもしれないが、これこそ、言うは易く行うは難し、の典型ではあるまいか。「偏見の強い人は、親とか、政治的指導者とか、宗教的指導者とか、何らかの権威的存在を崇拝し、精神的に依存する傾向が強い」といわれても、イスラム教なりキリスト教なりを信じている人は世界中にたくさんいるわけで、宗教を否定するわけにはいかないだろう。

また、わたしを含めて、たいていの人の心はそんなに強いものではないと思う。否定的なことを他人のせいにしたくなったり、自分を楽にするためにだれかを軽蔑したりすることは、よいことではないが凡人には避けがたいことだし、いかにも人間らしいことだ。

社会はそういった多数の心の弱い人によって構成されているということを前提にして、それでも偏見や差別をなくしていくことはできるか、具体的には何ができるのかを考えなければ、机上の空論になってしまうように思う。

それでも、日本人の美貌観や異人観の歴史的変遷については、なかなかおもしろいことが書いてある。興味と機会があれば読んでみても損はないと思う。

なお、絶版なので書店では購入できない。たんご屋は古本屋で入手した。

(以前別のブログに書いた記事を改変して再掲しました)
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