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冤罪
えん‐ざい【冤罪】 ヱン‥
無実の罪。ぬれぎぬ。「―を晴らす」
(広辞苑 第六版)


冤罪の「冤」という字は常用漢字ではないらしく、日経新聞の記事でも本文中で一部「冤罪(えんざい)」と表記している。自分の仕事では基本的に常用漢字以外の漢字を使ってはいけないことが多いが、もしこのことばを書かなければならなくなったら「えん罪」という表記はさすがに気持ち悪いのでたぶん「ぬれぎぬ」と言い換えて書くと思う。

今では冤罪以外の熟語で「冤」という文字を見ることはほとんどない。しかし、むかしは「無実の」という意味で「冤なり」という形容動詞があったようだ。「枕中記」に「帝冤なるを知る」という一節があるらしいが、このように漢文の読み下し文や漢文調の文章で使われたのだろう。

鳩山邦夫法相は、志布志事件を「冤罪と呼ぶべきではない」と発言したという。冤罪とは判決が確定してから真犯人が現れて無実が晴れたような場合に使うことばであって裁判で争って(有罪判決が出る前に)無罪となった場合は冤罪ではないという信念をもっていたようだ。つまり、無実の人に有罪判決が下って罰金なり服役なりの刑罰を受けてからでないと冤罪とはいえない、無実の人が告発されたり告訴されたりしただけでは冤罪とはいえないという考えだと理解した。志布志事件の被告の方々は確かに後者になる。

しかし、和英辞典で「冤罪」を引くと、どの辞書にも a false charge とか a false accusation という訳語が書いてある。charge とか accusation というのは告発、告訴、あるいは非難のことだから、少なくとも和英辞典の著者は、間違った(嘘の)告発も、間違った(嘘の)告訴も、間違った(嘘の)非難も、「冤罪」だと考えているようだ。志布志事件の被告たちは「間違った」告訴というよりも「嘘の」告訴をされたわけで、まさに false accusations=冤罪だった。わたしの認識はそうだし、多くのひとの認識もそうだと思う。

法務大臣とはいえ、いや、法務大臣だからこそ、一般のひとが理解していない独自の解釈で用語を使ってはいけないと思う。「冤罪」というのは法律用語でさえない一般的な用語のはずだ。法律の中に「冤罪」という語が出てくるとは思えない。

鳩山法相は、後にこの発言について謝罪して「今後公式の場では一切冤罪という言葉は使うまい」という主旨のことを言ったそうだ。この発言も意味不明だ。「志布志事件は冤罪とは呼べない」といったことを問題視されたのであって「冤罪」ということばを「ことば狩り」されたわけではない。法務大臣として「冤罪」ということばを使うべき状況は当然あると思うがどうするつもりなのだろう。あ、そうか、「ぬれぎぬ」というつもりなのか。


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