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「説明させていただく」「本日の司会を務めさせていただく」というような、「(さ)せていただく」という言いかたがある。この例では「説明する」や「務める」の謙譲語であるかのように使われているが、本当にそうだろうか。

「説明させていただく」は「説明する」の謙譲語ではないと思う。しいていえば「説明させてもらう」の謙譲語だ。「説明する」と「説明させてもらう(いただく)」は同じではない。たとえば、「車に乗る」と「車に乗せてもらう」はまったく違う意味になる。相手の許可を得て、あるいは相手の好意に甘えて自分が得になることをするというのが「せてもらう(いただく)」ということだろう。

「せてもらう」というのは最終的に本人が得をする行為だから、それ自体はへりくだった表現ではないような気がする。「いわせてもらえば(いわせていただけば)」というような言いかたがあるように、あなたがなんといおうと勝手に、という含意を感じる場合さえある。

たとえば、次の例(太字はたんご屋)。

女だてらにだいそれたさいころいじりをやって、お米の代なりとかせがせていただこうとしたのがまちがいのもとでござりました。
(佐々木味津三『右門捕物帖』)

だれかに許可を得てかせごうとしたわけではないだろうから、「かせがせてもらう=勝手にかせぐ」という意味に近いような気がする。

次の例はどうか(太字はたんご屋)。

私たちだって、ただでものを食べさせていただこうとは思っていません
(太宰治『やんぬる哉』)

これは、「(相手の好意によって)ただで食べさせてもらう」ということで、「車に乗せてもらう」と似た言いかたかもしれない。ただ、これだって、「ただで食べてやろう(と思ってはいない)」という意味にとれなくもない。

もちろん、本当の意味で「せてもらう」といいたいことはある。他人の家にいるときに急用を想い出して「すみませんが、ちょっと電話をかけさせてもらえますか(いただけますか)」というような場合だ。しかし、「説明する」とか「司会を務める」のような自分の意思で行う行為を「説明させていただく」とか「務めさせていただく」などというのは謙虚どころか傲岸だと思われる可能性もあるかもしれない。

「説明する」を謙譲語(および丁寧語)にするなら「ご説明します」「説明いたします」といえばよいと思う。「司会を務める」はそのまま謙譲語にするのがむずかしいけれど、「司会を務めます」と丁寧語だけにするか、「司会をいたします」と言い換えることはできる。

参考:
文化審議会「敬語の指針(答申)」


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