上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
一昨日、将棋「朝日杯将棋オープン戦」の本戦トーナメント、深浦康市王位 対 久保利明八段戦 のネット中継を見た。久保八段のさばきがあまりにみごとで感動した。リンク先のサイトで再現することができるので、将棋のわかるかたは是非観賞していただきたいと思う。

「さばき」というのは将棋の用語で、将棋を知らないひとに意味を説明するのはむずかしい。将棋の世界で「さばき」の反対語は「押さえこみ」だといえば少しはわかっていただけるだろうか。簡単にいえば、攻め駒を効率よく活用すること、というような意味だ。久保八段は「さばきのアーチスト」と呼ばれる現棋界随一のさばきの名手である。

「さばき」には強引なさばきとか豪快なさばきというようなものもあるが、久保八段のさばきは「軽いさばき」だ。「軽い」というのは、適切な場所に必要十分なだけの駒を起用する、というようなことである。久保八段の指し手のような「軽いさばき」は数学でいう「エレガントな解」のようなもので、力強さよりも優雅さや美しさを感じる。アーチストといわれる所以だろう。

しかし、軽い指しかたというのは必要なときに必要な分だけしか資源を投入しないというかんばん方式のような方法なので、ちょっとでも誤算が生じると失敗することになる。「軽い」指しかたのつもりが実は投入する資源が足りなかった、というのを将棋用語で「薄い」という。「薄い攻め」はうまく受けられると成功しないし、「薄い受け」は相手に好手があると簡単にやぶられてしまう。

久保八段の対戦相手だった深浦王位は、どちらかといえば、逆に粘り強く手厚い棋風だ。「手厚い」というのも将棋用語で、これまた説明がむずかしい。勢力を多めに投入する指しかたとでもいえばよいだろうか。「手厚い攻め」といえば容易に受けきられることのない物量攻めのことであり、「手厚い受け」といえば当座必要な量以上の勢力を受けに投資することだ。多少の誤算があっても攻めが続かなくなったり簡単に攻め潰されたりする危険は少ない。しかし、勢力を過剰に重複させてしまって効率が悪くなりすぎることもある。そういう手は、「重い」と表現する。「薄い手」とか「重い手」というのは代表的な悪手だ。

「軽い手」や「手厚い手」はどちらも好手の見本だが、将棋界では一般に「軽い手」よりも「手厚い手」のほうが好まれるし評価も高い。将棋は数学ではなくて勝負事なので、駒を適時適材適所に活用する最適解に近い「軽い手」よりも、不測の事態に備えて資源を余分に投入した「手厚い手」のほうが悪手になる危険度が低く、仮に悪手になっても罪が軽いということだろう。しかし、わたしは見た目に美しい「軽い手」が好きだ。久保八段の将棋はいつ見ても楽しい。
コメント
この記事へのコメント
説明がすごくわかりやすかったです。ちょっと感動しました。
2009/10/05(月) 12:24 | URL | 名無し #-[ 編集]
どうもありがとうございます。
これを書いたのはもう半年も前になるんですか。今読み返すとちょっと直したいなと思う部分があります。
2009/10/06(火) 10:28 | URL | たんご屋 #Qhkulfr2[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://tangoya.blog95.fc2.com/tb.php/463-0988f960
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。