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西原さんは、「恨みシュラン」や清水義範さんの本の挿絵で、過激だが意外に鋭い観察や指摘をするひとだなと思っていた。単行本の叙情的な漫画もいくつか読んでいる。で、この本を読んだ。

漁師町に生まれた西原さんが子どものころのお金は魚のにおいがしたというのは、とてもよく共感できる。わたしも漁師町の出身でしかも親が漁師だから、子どものころのほとんどすべての想い出には魚の匂いや汐の匂いがつきまとっている。そしてそれがなつかしく大切な想い出であるというのも西原さんと同じだ。そういう子どものころの想い出の中にあるカネと、いま自分が東京で稼いだり使ったりしているカネは、確かに何かが違うような気がする。

わたしがいたころの田舎の漁師町では、大人も子どもも「モノ」つまり魚やタコやカニやダイコンが本質というか世界を構成している本当の存在で、カネはモノを交換するために使う道具と見なしていたように感じる。田舎では魚やタコは海に行けばそこにいる。つまり、田舎では最初にモノがそこにあってそれがカネに変わる。わたしの祖母は魚を自転車に積んで行商にでていたし、子どもは自分でハマグリを捕って売ったりしていたわけだから、それは当然といえば当然の感覚だ。

一方、都会ではまずカネを稼いでそのカネをモノに替える。最初にモノがあるのではなくて最初にカネがあるような感じがする。つまり、カネがなければモノはまったくなくなる。わたしは情報をいじくることでお金をもらう仕事をしているからなおさらそう思うのかもしれない。しかし、それは都会にすむひとの典型的な仕事の形態だろう。モノの量には限度というものがあるけれど、モノと紐付けされていないカネはただの数字になって限度というものがなくなるから、いくらでも貯めたり使ったり賭けたりできるようになる。

西原さんも、幼いころに見た、漁師が無造作にポケットに突っ込んでいた「魚の匂いのするカネ」と、大人になって漫画を書いて稼いだりギャンブルや為替相場でやりとりしたりする「情報としてのカネ」の違いを実感したのだろう。

この本は題名だけ見ると「何よりもカネが大事」という価値観の本のようだが、そうでもない。西原さんは、カネはとても大事なものだけど、自分でからだを動かしていろいろな経験をし、労働の対価としてもらう「手でさわれるカネ」、「匂いのするカネ」の感覚を身につけることが大切だということをいちばんいいたいのだと思う。
コメント
この記事へのコメント
「匂いのするカネ」「手でさわれるカネ」...それが人の生活の基本ですよね。今でもそれは変わらないはずなのに、虚業ともいうべき投資家、大資本家が、体を動かして金を稼ぐ痛みやつらさも知らずに巨額の金を一瞬のうちに居ながらにして稼ぎ、彼らの失敗が今、彼ら自身にではなく、一番弱いところに真っ先に皺寄せとなって現われているのを見ると、腹立たしさを通り越して悲しくなってしまいます。
丹後の海ですか。汐の匂いの中で育たれたんですね。たんご屋さんになんだか一挙に親しみを感じるようになりました。今まで、ちょっと怖いかな、なんて思っていましたもので(笑)。だってとっても学識がおありになるし、正確さと厳密さを大切にしていらっしゃるようなので、万事に大雑把なわたくしは、ちょっと恐れを感じていたのです。
2009/02/26(木) 00:46 | URL | 沈丁花さん #m9.eh7ss[ 編集]
西原さんの漫画はおもしろいですよ。この春からテレビアニメになる作品もあるようです。

父や母のような一次産業に従事するものから見ればわたしの仕事なども虚業でしょう。モノを基盤とせずに情報をただ加工しているだけですから。しかし、根っからの都会人はむしろそれを当然とする世界像を持っているように感じます。つまり、魚や野菜といった手でさわれるモノよりも、雇用制度とか金融システムとかいう人工的、観念的なもののほうに現実感を感じているような気がします。西原さんやわたしのような田舎出身者には、都会のそういう部分がよく見えて、危うさを感じてしまうのかもしれません。

沈丁花さんも海辺でお育ちになったのですか。ただ、わたしが海辺で育ったこととわたしが怖い人間かどうかは関係ないと思いますが(笑)。学者じゃあるまいし、学識などありませんよ。「正確さと厳密さ」ですか。うーん、どうだろう。本質的にはいいかげんな人間だと思いますが、他人に迷惑をかけない程度にはいいかげんでないようにしようとは努めています。人間っていいかげんなほうが怖いじゃないですか。どういう理由で当たられるかわかりませんから。偏見も先入観も権威主義も、いいかげんな気持ちというか、自分で考えて自分で判断しようとする手間を惜しむことから生じるのでしょうしね。
2009/02/26(木) 05:33 | URL | たんご屋 #Qhkulfr2[ 編集]
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