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命と向き合う 老いと日本人とがんの壁」という本を読んだ。

解剖学者の養老孟司さんは、現在の日本人は「自分は死なない」と思っている、そのために社会や医療がおかしくなっている、という主旨のことを最近よく書いている。

この本では、がんの放射線治療と緩和ケアの専門家である中川恵一さん、精神科医の和田秀樹さん、そしておふたりの東大医学部時代の恩師にあたる養老孟司さんの 3 人が、そういう主張を繰り返している。

対談と講演の書き起こしがほとんど。また、やはり高齢の読者を想定しているのか、文字がかなり大きい。あっという間に読み終わる。

「人間の死亡率は 100%」「がんと認知症はどちらも老化現象」というのが何度も繰り返して出てくるこの本のキーワードだ。身体の老化ががんで脳の老化がボケ。長生きすればどちらも避けることができないという。

また、中川さんは、現在の日本人にはもう 1 つ傾向があるという。それは、善か悪か、がんかがんでないか、老人か若者かなど、はっきりと割り切りたがるアメリカ的な考えが支配的になっていることだ。たとえば、終身雇用制の廃止、アンチエイジングの流行などがその例だという。

和田さんは、こういった現象から

「老いを受け入れるスタンスが弱くなっている」
「老いを前向きに受け入れることを公言して脚光を浴びた『老人力』も、マネー敗戦以来の若さ至上主義に押し切られてしまった」

という。わたしも「老人力」を読んでおもしろいと思ったが、たしかに、老いを受け入れるつもりのないひとにはあのような価値観はまったく理解できないだろう。

考えてみれば、勝ち組、負け組とかいった言葉が流行したり、ともかくお金があることがよいことだという堀江さん流の拝金主義がある程度は世間に受け入れられたりした(たとえば自民党が選挙で彼を擁立した)ことなどもそういう傾向の 1 つだ。

あるいは「脳年齢」とか「脳トレ」とかいったことの流行。多くのひとは脳が若いことが絶対的によいことだと思っているようだ。身体がどんどん衰えていくのに脳だけ元気なままでどうするのか。身体の老化に従って脳(神経系)も相応に老化しないといびつになってしまう。大学教授のように脳を酷使する仕事は脳卒中になりやすいと養老さんも何かでいっていた。

まあ、大脳生理学の第一人者久保田競さんによれば現在のゲームなどの「脳年齢」という概念には意味がないそうだ。

実際にがんになってからこういう本を読むのはつらいし、痴呆症になってからではおそらく読めない。いまのうちに読んでおくのがよいと思う。

(以前別のブログに書いた記事を改変して再掲したものです)
コメント
この記事へのコメント
たんご屋さん、こんにちは。
私の専門分野の一つに、緩和ケアがあります。日本でも積極的に取り組んでいましたが、こちらでもこれから始める在宅医療の患者さんの30%は、ホスピスの患者さんです。死や老いというものに向き合うためには、やはりいかにまずそれを受け入れるか・・ということなのではないかなと思います。死というものを肯定して、はじめて今の命を生きることが出来るのではないかなという気がします。従来、医者の世界では、死は患者を救えなかった医者の敗北である(death is the ultimate failure)。。みたいに捉えられていて、患者さんが末期のがんで手の施しようがなくなると、医者は患者さんから足が遠のいてしまいがちでした。本当は、患者さんや家族は。。もっとサポートが必要なときなのに。。。反対に、死を真正面から受け入れ、患者さんの残された現世での生をいかに支えるかというのが緩和ケアの考えです(Enabling a patient to live fully and comfortably until he or she dies is a success)。

また、自分が重大な事故にあった、完治の難しい病気にかかった。。というのは、若いからと言っても避けて通ることが出来ない問題です。例えば、ずっと人工呼吸器につながり、人工栄養を受け続けるのか。。こうした話を元気な時にすることは、馬鹿げているかもしれませんし、ぎょっとするかもしれません。ただ、いつ何が起きた時でも、自分の意思をはっきり身近な人に理解しておいてもらうということは大切なことだと思います。この話をなかなか切り出すことが出来ない環境も、やはり自分はそういう状況にならない。。という考えがあるからかもしれません。

私が、この夏から在宅医療に本腰を入れようと思ったのも、こうしたお年寄りやホスピスの患者さんは、やはり医者でも関わりを避けたがる傾向にある、いわゆる一つのmedically underservedの方々だからなのです。

いつかは誰にも訪れる、老いや死を。。今一度、よく考えてみたいですね。。ごめんなさい、長くなってしまいました。
2007/05/24(木) 12:40 | URL | Mickey #-[ 編集]
「人間は必ず老いて病んでいずれ死ぬ」ということを覚悟させるのは、もともとは宗教家の役割だったのだろうと思います。しかし、最近は「何でも制御できる(はずだ)」という科学技術信仰が強くなって相対的に宗教家のちからが弱くなったのでしょうか、養老先生のいうとおり、多くのひとは「自分は死なない」と思っているような気がします。
かつては京の都でも行き倒れや野ざらしのされこうべがあったり、地震や火事、戦災などがあったりしたでしょうから、生老病死とか諸行無常とかいった観念はだれでももっていたのでしょうが、わたしの住む現在の東京では、猫の死体、ネズミの死体 1 つ目にすることがありません。そして、人間の多くは病院で生まれて病院で死にます。現在の東京では「死」という観念そのものがわたしたちの視野から意図的に隠されています。であれば、そこに住むひとが「死」を忘れたとしてもしかたがないのかもしれません。
日本では、健康増進やアンチエイジングが異常なブームになっています。人体も自然であるということ、そして、わたしたちの先達は、若者も中年も年寄りもその年齢なりの生活を受け入れて暮らしてきたのだということをもう少し考えてみてもよいのではないかと思いました。
2007/05/24(木) 14:38 | URL | たんご屋 #Qhkulfr2[ 編集]
私も、最近になってやっと「老いる」ということに興味が出てきたところです。人生の折り返し地点に来たからでしょうか。若い頃はなかなか想像すら難しかったことです。
たんご屋さんが死体を目にすることについておっしゃっていますが、私もわかるような気がします。このあたりでは、車にひかれた小動物を2、3日そのままにしておくことも多々あり、リス、スカンク、鹿などが内臓をさらけ出して倒れているのを見かけます。私は何気なく通り過ぎていますが、特に鹿など大きい動物だと、子どもたちの注意は多大で、目が釘付けになります。
これも、ある意味「死について考える」きっかけにもなっているのかなあ、と思いました。
2007/05/24(木) 23:42 | URL | どんぐり #-[ 編集]
そうですね。人生の残り時間が少なくなってくると、若いころは考えなかったことを考えるようになりますね。からだ(脳を含めて)の老化を実感しますしね。
そちらでは、大きな動物の死骸があったりするのですね。それは、おっしゃるとおり、お子さんが死というものを意識するきっかけになっているのでしょうね。
子どものころ、どこかのおじさんが獲ってきた野ウサギをうちでもらいうけて飼ったことがあります。野ウサギとしてはめずらしくとてもなついていたのですが、やはり人間よりは寿命が短くて何かのきっかけで死んでしまいました。両親が近くの空き地にそのウサギの墓を作ってくれて、それから何年かはお彼岸なると先祖の墓といっしょにそのウサギの墓にもお参りをするのが習慣になっていました。その墓のあった場所は開発されて大きな道路になりそういう習慣も自然となくなってしまいましたが、よい情操教育をしてもらったと思います。
2007/05/25(金) 07:06 | URL | たんご屋 #Qhkulfr2[ 編集]
入院中にさんざんSTの訓練をやらされた身としては。。流行の脳トレは嫌いです。だいたい。脳の病気でちょっとぼーっとしている人を赤ちゃん扱いするのは。。受け入れられません。どうして。ああなるのかな。。
それより、いつまでも続くと思っていた人生、明日死んじゃうかもしれない、と思うので、必死でやりたい事をやってます。でも。。老いに大しては。まだ受け入れられない。。です。何年たったら。受け入れられるのか。。難しいです。。
2007/05/25(金) 10:24 | URL | Little My #GMiUtySc[ 編集]
「人間はいずれ死ぬ存在である」と意識なさっているかたは、悔いが残らないように毎日を過ごしていらっしゃるようですね。アルクブログのつぼみさんもそういうかたですね。
こんな記事を書いていますが、まあ読んでおわかりになると思いますが、わたしはただ頭でっかちに理解しているだけで、その域にまだ達していません。Little My さんやつぼみさんを見習って、明日死んでもよいというつもりでやりたいことをいっしょけんめいにやっていきたいと思うのですが、生来なまけ者の自分にはなかなかむずかしいです。
2007/05/25(金) 10:51 | URL | たんご屋 #Qhkulfr2[ 編集]
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